JA愛知厚生連江南厚生病院(2012年3月現在)

JA愛知厚生連 江南厚生病院 看護管理室 祖父江正代

1. 褥瘡ハイリスク患者ケア加算を算定するためのプロセス

※当院における褥瘡対策の対象者
厚生労働省が義務付けている褥瘡リスクアセスメントの対象者は、自立度BランクとCランク(寝たきり)の患者である。しかしながら、終末期患者や離床期にある患者のように自立度A2の寝たり起きたりの者にも褥瘡発生をみとめる。そのため、当院では、自立度A2~Cランク患者を褥瘡対策対象者として、褥瘡予防計画を立案するようにしている。
※当院で使用している電子カルテ
当院の電子カルテシステムは、HOPE/EGMAIN-EX(富士通)である。System Engineerと相談し、テンプレート機能と専用プログラムを融合させ、開発した褥瘡対策専用ツールである。

1) 初回アセスメントから褥瘡ハイリスク患者の選定まで

褥瘡診療計画書による褥瘡リスクアセスメント(図1
褥瘡診療計画書は通常、褥瘡対策対象者のみでよいとされているが、褥瘡リスクアセスメントを実施し、褥瘡対策の必要がないことを記録に残すために、入院患者全員に褥瘡診療計画書を作成している。
患者の氏名、年齢、性別、主治医、主担当看護師、診療科、病棟などの基礎情報はもちろんのこと、身長、体重、BMI ;Body Mass Index、検査データは自動で最新データが入力される。褥瘡リスクアセスメントツールには、障害老人の日常生活自立度(以下、自立度)とブレーデンスケールを使用している。
病期や自立度、ブレーデンスケール、現在使用している体圧分散マットレス名や推奨体圧分散マットレス以外のものを使用している理由など褥瘡対策上重要な項目が記載されていない場合はワーニングメッセージが表示され、「保存」終了できないようになっている。
自立度の結果をもとに、患者個々に必要な記録が自動で展開される。褥瘡診療計画書を記載し、「保存」を選択すると、自立度Jランク、A1患者の場合は終了、A2、B1患者は褥瘡予防治療計画書が自動展開、B2、Cランク患者は褥瘡リスクアセスメント票が自動展開され、複雑な記録をガイド化する仕組みになっている。なお、記載された記録はカルテに展開される。
褥瘡リスクアセスメント票による褥瘡ハイリスク患者ケア必要性の評価(図2
自立度B2とCランクの患者は褥瘡リスクアセスメント票(図2)を用いて褥瘡ハイリスク患者に該当するか否かを評価する。該当者の場合はその日付、トータルアセスメントなど厚生労働省の様式と同様の内容を記載する。褥瘡リスクアセスメント票を記載し、保存すると、褥瘡予防治療計画書が自動展開される。
褥瘡予防治療計画書による褥瘡予防計画の立案(図3
褥瘡ケアを標準化するために、自立度やブレーデンスケール、危険因子などの項目に基づいて、自動でケア計画が立案される。これには、筆者らが作成した幾つかの計算式がテンプレート内に組みこんである。たとえば、体圧分散マットレスについては、ブレーデンスケールの可動性、活動性の得点と病期、危険因子、身体症状によって交換圧切替型エアマットレスあるいは上敷二層式エアマットレス、交換静止型マットレスのいずれかが自動で表示される。推奨する標準的ケアだけでなく、患者の状況に応じて加筆、修正も可能である。この褥瘡予防治療計画書は看護計画開示の際に印刷して患者や家族に手渡すこともできる。
手術室での褥瘡対策については、手術看護特有のケアが必要となるため、手術室褥瘡予防計画書(図4)を用いる。
定期的な褥瘡リスクアセスメント
入院時、週に1回(火曜日に設定)、状態が変化したときに褥瘡発生のリスクを評価する。記録の種類を減らすために、この場合も褥瘡診療計画書の様式を活用している。

2) 皮膚・排泄ケア認定看護師の褥瘡ハイリスク患者ケア介入方法

院内全体の患者の状況の把握(図5
褥瘡対策対象者に限らず、入院している全患者の褥瘡リスク状況や必要な記録が一覧表示される。一覧表示は全病棟、各病棟と選択でき、この一覧表示から各褥瘡関連記録を作成することができる。また、電子カルテシステムで起動しているため、入院、転棟、転室、退院が反映されたリストが表示される。そのため、ラウンド日に転室や転棟があった場合でも、見落とすことはない。
基準日を変更すると、過去の指示した日の状況も表示できる。
褥瘡ハイリスク患者の抽出(図6
図5の一覧表示の項目には、褥瘡の有無、リスク状態、自立度、活動性、可動性も表示されており、これら項目にカーソルを合わせ、選択フィルタをかけることで、その項目の該当者のリストを作成できる。なお、皮膚・排泄ケア認定看護師でも自由にこの項目の追加・修正ができる。
図6は褥瘡ハイリスク患者ケア対象者(リスク「◎」を示す)のリストである。院内全体の褥瘡ハイリスク患者ケア対象者のリスト(ラウンドリスト)が一瞬で作成できる。
褥瘡ハイリスク患者ケア介入
褥瘡ハイリスク患者リストをもとに病棟ラウンドを行う。当院では3名の皮膚・排泄ケア認定看護師がそれぞれの担当病棟に週に1回、出向いて褥瘡ハイリスク患者ケアについて病棟看護師とともに検討している。ラウンドでは、患者に自己紹介をしたうえで、患者の病状や活動・可動状況、皮膚の状況、ポジショニング、体圧分散マットレスの使用状況、マットレスによる不快感、同一体位による痛みの有無などを確認している。
褥瘡対策リンクナースが勤務している時には、褥瘡発生状況や予防ケア状況について受け持ち看護師やリーダー看護師だけでなく、リンクナースとも一緒に検討する。リンクナースがその部署でリーダーシップが図れるよう支援することも忘れない。
褥瘡ハイリスク患者ケア記録の承認とカルテ記載
前述した図6の一覧患者にカーソルを合わせ、「カルテを開く」を選択すると、病棟マップやカナ検索などを利用しなくても患者の情報収集ができたり、ラウンド後のテンプレート記録を記載できる。カンファレンス記録はテンプレートの褥瘡ハイリスク患者ラウンド記録とWOC看護記録に記載する。WOC看護記録は年度末のケア件数の抽出を容易に行うためである。
褥瘡診療計画書、褥瘡リスクアセスメント票、褥瘡予防治療計画書を確認したら、その印として「承認」する。皮膚・排泄ケア認定看護師が「承認」すると、他の人はこの記録を修正、削除できなくなる。この機能は、褥瘡管理者として関わったという記録を残すだけでなく、適正なデータや情報を確実に残すために付加した。
褥瘡ハイリスク患者ケア加算あるいは褥瘡患者管理加算の算定
体圧分散マットレスの使用などの褥瘡対策を行うと褥瘡患者管理加算として1入院20点、褥瘡ハイリスク患者ケアを行うと褥瘡ハイリスク患者ケア加算1入院500点を加算できる。ただし、2つの加算を同時に算定できない。このような複雑なシステムのため、医事担当者は混乱しやすく、診療報酬算定におけるミスの危険性もある。
この電子カルテツールでは、褥瘡管理者である皮膚・排泄ケア認定看護師が褥瘡リスクアセスメント票と患者の状況を目で確認し、褥瘡ハイリスク患者ケアが必要であると判断して、「承認」すると、その時点で褥瘡ハイリスク患者ケア加算が自動で算定される仕組みになっている。そして、褥瘡ハイリスク患者ケア加算の算定はなく、褥瘡予防治療計画書を作成して褥瘡対策を行っている患者に褥瘡患者管理加算を算定できる仕組みになっている。

3) 褥瘡発生時の介入方法

褥瘡が発生した場合は、褥瘡発生報告書を病棟看護師が記載する。褥瘡発生報告書のデータは褥瘡発生した誘因を明らかにできるよう患者の個体要因と看護ケアを含む環境ケア要因を記載するようになっている(図7)。
皮膚・排泄ケア認定看護師は図5の一覧表示の褥瘡の有無の「あり」で選択フィルタをかけ、褥瘡保有者のリストを作成し、ラウンドする。褥瘡回診はstageⅠ・Ⅱの褥瘡は皮膚・排泄ケア認定看護師が確認し、主治医と褥瘡治療方法を検討する、stageⅢ以上は皮膚科医師、理学療法士、栄養士とともにラウンドし、褥瘡治療方法を検討している。
褥瘡発生後のケアを行った後は、必要に応じて褥瘡発生報告書の適正データに修正や加筆したうえで、カルテを「承認」し、適正データを残す。褥瘡の定期的な評価は褥瘡評価書に記載する。

2. 褥瘡ハイリスク患者ケアの評価 ―臨床指標の活用と定期的なデータ分析―

褥瘡診療計画書、褥瘡リスクアセスメント票、褥瘡予防治療計画書、褥瘡発生報告書はデータ出力機能を用いてMicrosoft Excelにデータ抽出できる。そのデータを用いて褥瘡対策の問題点を分析している。
まずは、アウトカム指標である褥瘡発生率、褥瘡ハイリスク患者褥瘡発生率、プロセス指標として体圧分散マットレス適正使用率やリスクアセスメント適正採点率を算出して効果の有無を評価している。また、褥瘡ハイリスク患者ケア加算および褥瘡患者管理加算で得た収入も算出している。
また、3か月間および1年間の病期別、部署別の褥瘡発生誘因を分析し、褥瘡ケア上の問題点を明確にし、年間の課題、目標、計画、評価を行っている。これらデータは、褥瘡対策リンクナースおよび病棟師長を通して毎回各部署にフィードバックしている。

3. 褥瘡対策を成功させるカギ

1) 褥瘡ケア上の問題点を明確にするための発生時に着目したデータや情報の収集

創のサイズや浸出液量、肉芽組織の状況、壊死組織量などいわゆるDESIGNに含まれるデータや情報だけでなく、褥瘡発生につながったと考えられる患者の個体要因や環境・ケア要因に関する情報も収集し、褥瘡発生誘因の分析につなげている。

2) データ・情報をもとにした褥瘡マネジメント

創の形状や発生部位、不足していたケア内容から褥瘡発生誘因を抽出する。患者個々の褥瘡発生誘因を分析し、それを集計することによって各部署あるいは院内全体の褥瘡ケア上の問題点が明確になる。
これら抽出された問題を解決するためにPDCAサイクルを活用して毎年計画を立案する。年間の院内学習会のテーマや体圧分散マットレスの整備などもこの計画の一つである。

3) 病期と褥瘡発生誘因に基づいて焦点を絞った課題への取り組み

「褥瘡発生を減らしましょう」「マニュアルに基づいた褥瘡ケアを行いましょう」と漫然と褥瘡対策を行うより、どの患者に何をどう強化していったらよいかを明確にした方が実践する看護師スタッフにも課題への取り組みが浸透しやすい。病期別の褥瘡発生誘因を抽出することで、どの患者に何のケアを強化するかも明確になる。

4) ワンデー調査による患者のリスクアセスメント結果を基にした体圧分散マットレスの整備

ワンデー調査を実施し、その日に全患者のリスクアセスメントを一斉に行う。体圧分散マットレス選択基準がある場合は、そのリスクアセスメント結果から患者個々の推奨される体圧分散マットレスが抽出できる。それを合計することで、各体圧分散マットレス推奨数、つまり病院全体に必要な各体圧分散マットレスの種類と数が抽出できる。そこから現在保有している各体圧分散マットレス数を引くことで不足数、いわゆる購入が必要となる数が算出でき、その割合から体圧分散マットレス充足率も算出できる。さらに、推奨される体圧分散マットレスの数を抽出すると同時に、現在使用している体圧分散マットレスのデータも収集することで、体圧分散マットレス適正使用率や体圧分散マットレス稼働率も算出できる。体圧分散マットレスの充足率が低くても稼働率が低ければ、まずは体圧分散マットレスが使用できない理由を情報収集するとともに、使用することを目標にする。
購入の際には、必要な体圧分散マットレスの種類と特徴、数、その理由などを明確にし管理者に購入の交渉を行う。これまでの褥瘡対策の問題点や対策、その成果、体圧分散マットレス充足率、適正使用率、稼働率などをまとめて一緒に提出することで、より管理者に理解を得ることができる。

5) スタッフとの良好な関係性づくり

褥瘡対策の最も重要なことはスタッフとの良好な関係性作りではないかと考える。現場で褥瘡対策に関わっているスタッフがいなければ、褥瘡対策は成功しない。現場の忙しさや大変さを理解して、理想論だけでなく、現場で実践できる方法をスタッフと模索しながら今できることから段階的に少しずつ整備していくことが必要と考える。最初から高い目標は設定せず、現実可能な目標にしていくことで、スタッフのやる気の維持と褥瘡管理者である自分自身のモチベーションの維持にもつながるのではないかと考える。そして、目標達成した時には、「みんなで喜ぶこと」、これが大切だと考える。