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その他情報「褥瘡」の市民向け表記の検討結果について
2025.01.21

「褥瘡」の市民向け表記の検討結果について

委員会設立の背景と理由
館正弘前理事長より、褥瘡の表記に関するアドホック委員会の設立が要請され、須釜理事長体制の理事会において、学術委員会に「「褥瘡」のひらがな等への名称変更アドホック作業部会」が設立された。市民向けに適切な表記を選定することで、褥瘡に対する正しい理解の促進を目指す。名称変更はあくまでも一般市民向けの表記であり、専門的な医学用語としての「褥瘡」の変更を意図するものではない。
「褥瘡」は一般的に読まれにくく、漢字検定一級の難漢字に該当することから、広く理解されにくいという問題がある。また、一般には「床ずれ」という名称が普及しているが、この用語は寝たきりの方のみに発生するものとの誤解を生じやすく、車いす利用者や医療関連機器使用者などにも注意が必要な褥瘡の認識が十分に広がりにくい。

本アドホック委員会での検討の経緯
本委員会では、他疾患での名称変更の経緯の調査および褥瘡の用語の使用の変遷の調査を行った後に、候補名称の検討、理事会への報告とコメントの収集、第 26 回日本褥瘡学会学術集会のコンセンサスシンポジウムでのディスカッションの実施により、一般市民向けの表記としての名称変更を提案する。他疾患の名称変更の経緯の調査および褥瘡の用語の使用の変遷の調査では、Google による情報検索として、「疾患」、「変更」、「変遷」などのタームにより、広範に病院・学会・研究施設等の HP・スライドや、個人のブログなどを参照しリスト化した。その結果、精神薄弱から知的障害、痴呆から認知症、など、名称が差別的かつ病状・実態を正確に表していない場合に名称変更されていることが明らかとなった。また、「「褥瘡」と「床ずれ」の語誌(遠藤織枝. ことば. 2020)」によると、褥瘡は明治初期から使われ始め、大正時代には現在と同様の漢字として定着していることが伺われた。
これらの結果を基に、褥瘡そのものの漢字を変更する必要はなく、難漢字であり読みづらいという課題を解決するため、一般市民向けには「褥瘡(じょくそう)」の表記とすることが最も合理的かつ現場の混乱を生み出さないものとアドホック委員会として提案し、理事会での議論を基に、理事会において名称変更に関する意見調査を実施した。その結果、理事全員から「市民向けには「褥瘡(じょくそう)」と表記する」という意見への賛同を得た。その後、歴代理事長へのヒアリングならびに第 26 回日本褥瘡学会学術集会のコンセンサスシンポジウムでのディスカッションを経て、下記のとおり提案するものとする。

提案事項
日本褥瘡学会として、「褥瘡(じょくそう)」の表記が現状の課題を解決し、褥瘡の重要性を市民に啓発する際にも適した用語であるとして、市民向けの文書やポスター、広告媒体には「褥瘡(じょくそう)」を使用することを提案する。

本アドホック委員会は、学術委員会の中に位置づけられ、次の委員で構成された。
学術委員会委員長:北村言
アドホック委員会委員長:仲上豪二朗
アドホック委員会委員:田中マキ子、茂木精一朗、橋本一郎、日髙正巳、生島繁樹、真壁昇、袋秀平、加瀬昌子
オブザーバー:館正弘、須釜淳子

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